Papa's Spaghetti

パパのスパゲッティ

22歳。"そろそろ独立しなくては"と思っていたら母が代わりに独立していった。そしたらゲーマーがやってきた

"16歳になったら家を出なさい"

生前の父が言っていたその言葉を守って16歳でひとり暮らしを始めることにした。

場所は東京の板橋。下町風情十分な街。

最寄り駅は東武東上線上板橋駅で、西口か東口のどっちかを降りていくと蕎麦屋があった。僕はそこで働き始めた。

時給910円の旅の始まり。その時は1週間の間に茨城・東京・埼玉を行ったり来たりしていたから、稼いだバイト代はほとんど交通費に消え、少し残った金は飯代となった。

そして、週に一度、池袋の雑居ビルの中にある精神科に通った。

削られた心の修復に財布が削られていく。

ドクターからは「自立支援医療」という制度を紹介された。精神疾患を持った患者のために作られた保険制度で、通院治療費をかなり減らせることができるらしい。

申請用紙を貰ったはいいが、申請したら自分で自分の墓を掘ってしまうのような気がしてならなかった。

多分、僕はまだ大丈夫で、この制度を本当に必要としている人は他にいる。そう思い込むようにして何とか気を紛らした。

 

16歳というのは何かと多感な時期なのか。アルバイトも始められるようになる年齢でもあって、社会の中を少しずつ見れるようになるタイミングだと思う。

しかし、いくらバイトをしていたとしても、外から見れば僕は「高校教育をまとめに受けずにフラフラしているダメな奴」

しかし、幸い僕はひとりじゃなかった。

横には、僕と同じくらいダメな奴がいた。

彼も僕と同時期に都内でひとり暮らしを始めていた現実逃避組のひとり。

バイトもせずに、親から貰った生活費をタバコとゲームに費やして過ごす毎日。

夜のスーパーで安くなった豚肉と数十円で買えるもやしを炒めて、白米を掻き込む。

そんな夕食以外はゲームをするか、近くの公園でタバコをふかす。

彼はそんな生活送っていた。

対人恐怖症をこじらせていたから、人とも話さなかった。

彼はよく"やりたいことがわからない。夢も目標もない"と言っていた。

"実はもうやりたいことをやっているじゃないの、わからないけど" と僕は言い返していた。

そんな不毛な会話しかしていなかった。

 

どうしてか。

ふとあの時のことを思い出しては文章にしたくなる。上板橋がとてもいい町だったからもしれない。

あの時からもう4,5年が経って今は実家に住んでいる。

もう22歳、そろそろ二度目の独立を考えなくてはいけない。

そう思っていたある日、母が言った。

"再婚するから引っ越すよ!だからこの家はあげる。好きに使っていいよ"

あれ、なんだがおもしろ可笑しい。

独立していく母を親の眼差しで見送る息子。

親と子供の逆転現象。

多分、あんまり普通じゃない。

 

母親が引っ越してから数週間が経った今、リビングではプロゲーマーになることを夢見る少年が、マイク越しに仲間に指示を出している。

そんな人生のコントローラーを握り始めている少年にここで一言。

使わない電気は消しなさい!